第2部 制度・法令の基礎

【指導上の遵守事項】 制度を知らずに動くことは、不正請求・法令違反・行政処分に直結する重大なリスクである。「難しいから」「事務がやるから」で済ませてはならない。少なくとも保険の使い分け・指示書・記録の位置づけは、全員が確実に理解すること。判断に迷う算定・保険の適用は、独断で決めず必ず管理者・事務に確認する。

本部で扱う点数・加算・要件は年度改定で変動します。必ず最新の告示・通知で確認してください(第10部にリンク集)。

2-1 医療保険と介護保険の違い(適用の原則)

訪問看護は医療保険または介護保険のいずれかで提供されます。どちらが適用されるかは、年齢・要介護認定の有無・疾患などで決まります。まず「介護保険が優先」という原則を押さえたうえで、例外を理解します。

観点介護保険医療保険
主な対象要支援・要介護認定を受けた65歳以上等認定がない人/例外要件に該当する人
優先順位原則こちらが優先例外条件で医療保険へ切替
支給限度区分支給限度基準額の枠内枠の考え方が異なる
ケアプランケアマネのプランに位置づけ医療の指示・計画で提供

医療保険・介護保険の仕組み(基礎から理解する)

制度の大枠

  • 日本は国民皆保険であり、訪問看護の費用も公的保険から給付される。利用者の窓口負担は原則1〜3割。
  • 訪問看護は「医療保険」か「介護保険」のどちらか一方で算定する。同じ訪問を両方の保険で二重に請求することはできない。
  • 介護保険が使える人は介護保険が優先。ただし例外要件(別表7、特別訪問看護指示書の期間、精神科訪問看護)では医療保険が適用される。

① 医療保険の仕組み

  • 根拠法:健康保険法・高齢者医療確保法など。費用は「訪問看護療養費」として算定する。
  • 単位:金額は「円」建てで全国一律。
  • 費用の構成:`訪問看護基本療養費(1日ごと)+ 訪問看護管理療養費(月単位)+ 各種加算`。
  • 主な対象:40歳未満の人、要介護認定のない人、別表7に該当する人、特別訪問看護指示書の交付期間、精神科訪問看護の対象者 など。
  • 訪問回数:原則「週3日まで」等の上限があり、別表7該当・特別指示書などで緩和される。
  • 請求先:利用者が加入する医療保険(協会けんぽ・健保組合・国保・後期高齢者医療 など)。

② 介護保険の仕組み

  • 根拠法:介護保険法。費用は「訪問看護費」として算定する。
  • 単位「単位」建て。原則1単位=10円だが、地域区分により1単位あたり約10〜11.40円に割り増しされる。
  • 費用の構成:`所要時間の区分ごとの基本サービス費(1回ごと)+ 各種加算`。
  • 主な対象:要支援・要介護認定を受けた65歳以上の人、または40〜64歳で特定16疾病に該当する人。
  • 位置づけ:ケアマネジャーのケアプランに組み込まれ区分支給限度基準額の枠内で利用する。限度額を超えた分は全額自己負担。
  • 訪問回数:回数の上限はないが、リハ職(PT・OT・ST)の訪問には所定の制限がある。
  • 請求先:国民健康保険団体連合会(国保連)を通じて市町村へ。

③ 「円」と「単位」の違い(重要)

  • 医療保険は円建て(全国一律)、介護保険は単位建て(地域で単価が変動)
  • そのため、介護保険では同じ単位数でも都市部の方が金額が高くなる。自分の地域の1単位単価を必ず確認すること。

介護保険の被保険者(第1号・第2号)

介護保険の対象は、年齢によって第1号被保険者第2号被保険者に分かれる。訪問看護でどちらの保険を使うかを判断する前提知識として重要である。

区分対象年齢介護保険が使える条件
1号被保険者65歳以上原因を問わず、要支援・要介護認定を受ければ利用できる
2号被保険者4064(医療保険加入者)加齢に伴う「特定疾病(16疾病)」が原因で要支援・要介護認定を受けた場合のみ利用できる

– つまり、40〜64歳の人は、特定16疾病が原因でなければ介護保険は使えず、医療保険での訪問看護となる。
– 40歳未満の人は介護保険の被保険者ではないため、常に医療保険
– なお、第2号被保険者でも別表7該当・特別訪問看護指示書の期間・精神科訪問看護は医療保険が優先される(2-2参照)。

介護保険の特定疾病(16疾病)=第2号被保険者が認定を受けられる原因疾患

  1. がん(末期/医師が回復の見込みがないと判断したもの)
  2. 関節リウマチ
  3. 筋萎縮性側索硬化症(ALS)
  4. 後縦靱帯骨化症
  5. 骨折を伴う骨粗鬆症
  6. 初老期における認知症
  7. 進行性核上性麻痺・大脳皮質基底核変性症・パーキンソン病(パーキンソン病関連疾患)
  8. 脊髄小脳変性症
  9. 脊柱管狭窄症
  10. 早老症
  11. 多系統萎縮症
  12. 糖尿病性神経障害・糖尿病性腎症・糖尿病性網膜症
  13. 脳血管疾患
  14. 閉塞性動脈硬化症
  15. 慢性閉塞性肺疾患(COPD)
  16. 両側の膝関節または股関節に著しい変形を伴う変形性関節症

※別表7(20疾病)とは対象が異なる点に注意。特定16疾病は「40〜64歳が介護保険を使えるか」、別表7は「介護認定があっても医療保険になるか」を判断する基準である。

2-2 保険の使い分け(判断の基本フロー)

おおまかな判断の流れは次のとおりです(例外・詳細は必ず最新告示で確認)。

  1. 要介護・要支援の認定があるか?
    • なし → 原則 医療保険
    • あり → 原則 介護保険
  2. 認定があっても医療保険になる主な例外
    • 厚生労働大臣が定める疾病等(別表7)に該当
    • 特別訪問看護指示書が交付されている期間
    • 精神科訪問看護指示書による訪問(認知症を除く精神疾患)

※「同一日・同一利用者で保険をまたぐ」「複数ステーションが関わる」など複雑なケースは、管理者・事務に確認する習慣を。

2-3 別表7(厚生労働大臣が定める疾病等)と別表8(特別管理)

別表第7(厚生労働大臣が定める疾病等)=20疾病・状態

これに該当すると、要介護認定があっても医療保険での訪問となり、週4日以上の訪問・1日複数回訪問・2か所以上のステーション利用・退院日の訪問などの特例が認められる。

No.疾病等補足
1末期の悪性腫瘍いわゆる末期がん
2多発性硬化症
3重症筋無力症
4スモン
5筋萎縮性側索硬化症(ALS)
6脊髄小脳変性症
7ハンチントン病
8進行性筋ジストロフィー症
9パーキンソン病関連疾患進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、パーキンソン病(ホーエン・ヤール ステージ3以上かつ生活機能障害度Ⅱ・Ⅲ度に限る)
10多系統萎縮症線条体黒質変性症、オリーブ橋小脳萎縮症、シャイ・ドレーガー症候群
11プリオン病
12亜急性硬化性全脳炎
13ライソゾーム病
14副腎白質ジストロフィー
15脊髄性筋萎縮症
16球脊髄性筋萎縮症
17慢性炎症性脱髄性多発神経炎
18後天性免疫不全症候群(AIDS)
19頸髄損傷
20人工呼吸器を使用している状態病名を問わず対象

別表第8(特別な管理を要する状態等)=特別管理加算の対象

状態に着目したリストで、特別管理加算などの対象となる。

  1. 在宅悪性腫瘍等患者指導管理・在宅気管切開患者指導管理を受けている状態、気管カニューレ留置カテーテルを使用している状態
  2. 在宅自己腹膜灌流・在宅血液透析・在宅酸素療法在宅中心静脈栄養法・在宅成分栄養経管栄養法・在宅自己導尿・在宅人工呼吸・在宅持続陽圧呼吸療法・在宅自己疼痛管理・在宅肺高血圧症患者指導管理 を受けている状態
  3. 人工肛門・人工膀胱を設置している状態
  4. 真皮を越える褥瘡の状態
  5. 点滴注射を週3日以上行う必要がある状態

別表7は「疾病」、別表8は「状態」のリスト。該当内容は改定で更新され得るため、最新の告示(特掲診療料の施設基準等 別表第七・第八)を必ず確認すること。

2-4 指示書の種類

訪問看護は医師の指示書がなければ提供できません。

  • 訪問看護指示書:基本となる指示書。有効期間は最長6か月。
  • 特別訪問看護指示書:急性増悪等で頻回訪問が必要な場合に交付。原則月1回・有効期間14日以内(一定要件で月2回)。この期間は医療保険での対応となる。
  • 精神科訪問看護指示書:精神疾患を有する利用者への訪問に必要。
  • 在宅患者訪問点滴注射指示書:週3日以上の点滴注射が必要な場合に別途交付。

指示書に伴う費用(医療機関側で発生する)

指示書は主治医のいる医療機関が交付し、その際、医療機関は診療報酬として費用を算定する。この費用は「医療機関」が算定するもので、訪問看護ステーションが利用者から直接徴収するものではない(利用者は自己負担割合に応じた額を医療機関へ支払う)。

医療機関が算定する項目点数上限
訪問看護指示料300点(=3,000円相当)患者1人につき月1回
特別訪問看護指示加算100点月1回(対象者は月2回)
手順書加算150点6か月に1回
衛生材料等提供加算80点月1回
在宅患者訪問点滴注射管理指導料100点週1回

【指示書の郵送料についての注釈】
医療機関からステーションへの指示書の受け渡し(郵送・FAX・持参)にかかる費用について、明確な公的ルールは乏しい。指示書交付の費用(指示料)に含まれると解する考え方が一般的だが、郵送料の負担は医療機関とステーション間の取り決め・慣行によるのが実情である。トラブル防止のため、連携する医療機関ごとに受け渡し方法と費用負担を事前に確認・取り決めておくこと。利用者へ郵送料を転嫁することは、原則として適切でない。

2-5 介護保険サービスの流れ

  1. 申請(本人・家族が市区町村へ)
  2. 認定調査・主治医意見書要介護認定(要支援1〜2/要介護1〜5)
  3. ケアマネジャーがケアプラン作成(訪問看護もここに位置づけ)
  4. サービス担当者会議で多職種が合意
  5. サービス提供開始 → モニタリング・見直し

2-6 訪問看護計画書・報告書

  • 訪問看護計画書:利用者ごとに、目標・具体的なケア内容を計画。主治医へ提出。
  • 訪問看護報告書:提供したケアと利用者の状態を主治医へ報告(原則毎月)。
  • ケアマネジャーへの情報提供(サービス提供状況の共有)も重要。

これらは「記録=法的根拠・請求根拠・連携ツール」であり、実施の証明でもあります。

2-7 報酬・料金・加算の詳細

重要:金額・単位の基準時点について
医療保険(診療報酬)=令和8年(2026年)6月改定を反映(本体改定率+3.09%。物価対応料・ベースアップ評価料の見直し・遠隔診療補助料等が新設)。
介護保険(介護報酬)=令和6年(2024年)6月改定時点(介護報酬の次期改定は令和9年度=2027年度予定)。
– 診療報酬は2年ごと、介護報酬は3年ごとに改定され、金額・算定要件は変わる。実際の算定・請求は、必ず最新の告示と事業所の運用ルールに従うこと。新人が独断で算定判断をしてはならない。 本節は「仕組みを理解する」ことを目的とする。

2-7-1 報酬の全体像(費用の構成)

訪問看護の費用は、基本料金に、利用者の状態や事業所の体制に応じた加算が積み上がる構造である。以下では読みやすさのため、まず医療保険(2-7-2〜2-7-4)、次に介護保険(2-7-5〜2-7-7)の順で、それぞれ「基本料金 → 主要な加算 → 算定ルール」を整理する。両制度に共通する事項は2-7-8以降にまとめる。

比較項目医療保険介護保険
費用の呼び方訪問看護療養費(介護予防)訪問看護費
単位(全国一律)単位(1単位≒10~11.40円)
費用の構成基本療養費(1日)+管理療養費(月)+加算基本サービス費(1回・時間別)+加算
本資料の基準時点令和8年(2026年)6月改定令和6年(2024年)6月改定

利用者が窓口で支払うのは、原則としてその1〜3割である。

2-7-2 医療保険|基本料金(訪問看護療養費)※令和8年(2026年)6月改定

① 訪問看護基本療養費(Ⅰ)(1日につき)

職種・頻度金額(円/日)
看護師 週3日まで5,550円
看護師 週4日以降6,550円
准看護師 週3日まで5,050円
准看護師 週4日以降6,050円
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士5,550円(1日につき)

– リハ職(PT・OT・ST)の訪問も、医療保険では上記の訪問看護基本療養費(5,550円/日)として算定する(週の回数による区分はない)。
– 同一建物の複数利用者を訪問する場合は「基本療養費(Ⅱ)」となり、人数に応じて減額される。

② 訪問看護管理療養費(月単位)

区分金額
月の初日(機能強化型1)13,760円
月の初日(機能強化型2)10,460円
月の初日(機能強化型3)9,030円
月の初日(機能強化型4・新設)9,030円
月の初日(機能強化型以外)7,710円
2日目以降単一建物居住者数・訪問日数に応じ 約2,010~3,010円/日

– 令和8年改定で月初日の管理療養費が全区分で引き上げ。地域と連携して精神科訪問看護を行うステーションを評価する機能強化型4が新設された。
– 2日目以降は、従来の「管理療養費1/2」が統合され、単一建物居住者の人数と訪問日数に応じて細分化された。
– 管理療養費は「安定的な事業運営・24時間連絡体制・計画的な管理」等への評価。機能強化型は、常勤看護師数・重症者の受け入れ・看取り実績などの施設基準を満たした事業所が算定できる。

③ 機能強化型の主な算定要件(施設基準)

機能強化型は地方厚生局への届出が必要な施設基準で、以下の要件を満たす必要がある(主な要件の抜粋。要件は複数あり、いずれも満たすことが原則)。

区分主な人員要件主な実績・体制要件
機能強化型1常勤7人以上の看護職員(うち1人は常勤換算可)/看護職員割合6割以上/専門の研修を受けた看護師(専門看護師・認定看護師・特定行為研修修了者)の配置前年度のターミナルケア20件以上(または重症児の複数受け入れ等)/別表7・8該当など重症者の受け入れ実績/24時間対応体制の届出/居宅介護支援事業所を設置しケアプランを一定数作成/地域の医療機関・ステーション・住民への研修・相談対応の実績
機能強化型2常勤5人以上の看護職員(うち1人は常勤換算可)/看護職員割合6割以上前年度のターミナルケア15件以上等/別表7・8該当者の受け入れ/24時間対応体制/居宅介護支援事業所の設置/地域への研修・相談対応の実績
機能強化型3常勤4人以上の看護職員/看護職員割合6割以上別表7・8該当者や精神科重症患者等の受け入れ実績/医療機関との退院時共同指導等の連携/地域の医療機関・ステーションへの人材育成・研修の役割
機能強化型4(新設)常勤4人以上の看護職員/看護職員割合6割以上地域と連携した精神科重症患者(別表7・8該当者+精神科重症者で月10人以上等)の受け入れ・24時間対応・地域連携を評価する新区分

看護職員とリハ職員の人数比率(看護職員割合6割以上)について

機能強化型は、1〜4のすべての区分で「看護職員割合が6割以上であること」が要件となっている。

  • 割合の計算:`常勤換算した看護職員数 ÷ 常勤換算した看護師等の数`。
    • 看護職員=看護師・准看護師(保健師・助産師を含む)
    • 看護師等=看護職員+理学療法士・作業療法士・言語聴覚士(リハ職)
  • つまり、スタッフ全体(看護職員+リハ職)の6割以上が看護職員でなければならない(言い換えると、リハ職は4割まで)。

なぜこれが条件なのか(趣旨)
– 訪問看護は本来「看護を中心に提供するサービス」であり、機能強化型は特に重症者の受け入れ・看取り(ターミナル)・24時間対応といった、看護職員でなければ担えない機能を評価する仕組みである。
– 一方で、リハ職(PT・OT・ST)の訪問を多数抱え、実態はリハビリ中心の運営になっているステーションが増えたため、令和2年度改定で「看護職員割合6割以上」が要件に加えられた(リハ職偏重の是正)。
– この比率要件により、「看護の専門性が主体である事業所」であることを担保し、高い報酬(機能強化型)にふさわしい体制を確保している。同じ趣旨から、介護保険側でもリハ職の8単位減算(2-7-7)が設けられている。

共通の考え方:機能強化型は「地域で在宅療養を支える中核」として、①重症者・看取りへの対応力、②24時間の安定した提供体制、③地域への教育・連携機能、④看護を主体とした人員体制(看護職員6割以上)、を備えたステーションを高く評価する仕組み。
注意:具体的な件数・人数・割合・要件は改定で変わり、経過措置(例:専門の研修を受けた看護師の配置は一定期間の猶予)もある。算定にあたっては必ず最新の告示・地方厚生局の届出様式で確認すること。

2-7-3 医療保険|主要な加算(要件・内容)※令和8年(2026年)6月改定

加算金額(目安)算定の要件・内容
24時間対応体制加算6,800円/月(負担軽減の取組あり)/6,520円(なし)24時間連絡でき、必要時に緊急訪問できる体制を届出。利用者の同意が必要
特別管理加算5,000円/月(重症度が高い)/2,500円/月(その他)別表8の状態にあり、計画的な管理を実施。届出が必要(対象状態は2-7-8)
緊急訪問看護加算2,650円(月14日目まで)/2,000円(15日目以降)主治医の指示による計画外の緊急訪問を行った場合
長時間訪問看護加算5,200円/日別表7・8や超重症児等で、90分を超える長時間の訪問(週1回、別表7等は週3回)
難病等複数回訪問加算1日2回:4,500~6,000円/1日3回以上:8,000~10,000円別表7・8等で、主治医の指示により1日に複数回訪問した場合
複数名訪問看護加算職種・回数により加算暴力の恐れ・処置に複数名が必要 等で、2人以上で訪問した場合
夜間・早朝訪問看護加算2,100円夜間(18~22時)・早朝(6~8時)の訪問
深夜訪問看護加算4,200円深夜(22~6時)の訪問
乳幼児加算1,500円/日(一定の者は1,800円)※令和8年改定で引き上げ6歳未満の乳幼児への訪問
訪問看護ターミナルケア療養費(1)25,000円/(2)10,000円(死亡月)死亡日・死亡前14日以内に2回以上訪問し看取りケア。(2)は看取り介護加算等の算定者
退院時共同指導加算8,000円/回退院時に医療機関と共同で在宅療養上の指導を行い、文書提供
退院支援指導加算6,000円(長時間は8,400円)退院当日に在宅での療養上の指導を行った場合
在宅患者緊急時等カンファレンス加算2,000円/回主治医等と緊急のカンファレンスを行い共有
専門管理加算2,500円/月緩和ケア・褥瘡ケア・人工肛門等の専門研修修了看護師、または特定行為研修修了者による計画的管理
訪問看護医療DX情報活用加算50円/月オンライン資格確認等により診療情報を取得・活用
訪問看護医療情報連携加算(令和8年新設)1,000円/月他の医療機関・薬局・ケアマネ等がICTで記録した診療情報を活用して計画的管理(准看護師を除く)
訪問看護物価対応料(令和8年新設)月初日60円/2日目以降20物価上昇への対応。届出不要・全ステーションが算定可。令和9年6月から倍増(120円/40円)予定
訪問看護ベースアップ評価料(見直し)(Ⅰ)1,050円/月(旧780円)/(Ⅱ)30~1,080円の区分別看護職員等の賃金改善(ベースアップ)の財源。届出が必要。(Ⅱ)は18→36区分に拡大
訪問看護遠隔診療補助料(令和8年新設)2,650円/日オンライン診療に看護師等が同席(D to P with N)して補助した場合

2-7-4 医療保険|算定ルール(回数・時間)

医療保険の訪問看護には、次の3つの原則がある。

  1. 1日1回まで
  2. 週3日まで(※「週」は日曜日〜土曜日で数える)
  3. 1人の利用者につき1事業所(1ステーション)のみ

ただし、以下のいずれかに該当する場合は、この原則が緩和される。

対象週の回数1日複数回複数ステーション
通常の利用者週3日まで不可1か所のみ
別表7該当4日以上OKOK(難病等複数回訪問加算)23か所OK
別表8該当4日以上OKOK23か所OK
特別訪問看護指示書の期間4日以上OKOK2か所OK

① 同一日の複数回訪問(1日に2回・3回以上)

  • 別表7・別表8該当者などで、主治医の指示があれば1日に複数回訪問できる。
  • この場合、難病等複数回訪問加算を算定する(1日2回/3回以上で金額が異なる)。

② 同一日に複数のステーションが入る場合

  • 同一日に訪問看護基本療養費を算定できるのは、原則1か所のみ
  • 2か所目のステーションが同じ日に訪問しても、基本療養費は算定できず、緊急訪問看護加算等に限られることがある。
  • 事業所間で訪問日・曜日・役割分担を明確にし、二重算定(誤請求)を防ぐことが必須。

③ 複数の訪問看護ステーションを利用できる条件

利用できる数主な条件
2か所まで別表7・別表8該当者/特別訪問看護指示書の交付対象で、4日以上の訪問が計画されている
3か所まで別表7・別表8該当者で、7の訪問が計画されている(週7回の頻回訪問が必要な重症者など)

④ 時間のルール

  • 2時間ルール:同一利用者への訪問の間隔が2時間未満の場合、原則として複数回を1回にまとめて算定する(例外あり)。
  • 20分未満の訪問:頻回な医療処置(吸引・導尿・経管栄養等)が必要な人が対象。週1回以上、20分以上の看護職員の訪問があること等が要件で、単独では算定不可。令和8年改定で20分未満は基本療養費を算定できないことが明確化された。

介護保険には医療保険のような「1か所原則」の制限はなく、複数ステーションの利用はケアプランの範囲内・限度額内で原則自由。この違いに注意する。

2-7-5 介護保険|基本料金(訪問看護費/介護予防訪問看護費)※令和6年6月時点

介護保険は、要介護(訪問看護費)要支援(介護予防訪問看護費)で単位数が分かれる。要支援の方がやや低く設定されている。以下はいずれも訪問看護ステーションの場合(1回につき)。

① 要介護1〜5の人 = 訪問看護費

所要時間の区分単位数
20分未満314単位
30分未満471単位
30分以上1時間未満823単位
1時間以上1時間30分未満1,128単位
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士による訪問(1回・原則20分)294単位

② 要支援1・2の人 = 介護予防訪問看護費

所要時間の区分単位数
20分未満303単位
30分未満451単位
30分以上1時間未満794単位
1時間以上1時間30分未満1,090単位
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士による訪問(1回・原則20分)284単位

1単位は原則10円(地域区分により約10〜11.40円)。例:823単位×10円=8,230円、うち1割負担なら約823円。
准看護師が訪問した場合は、上記単位数の90/100で算定。
– 病院・診療所からの訪問看護は、ステーションより低い単位数が別に定められている。
– 介護保険は区分支給限度基準額の枠内で利用し、超えた分は全額自己負担となる。

2-7-6 介護保険|主要な加算(要件・内容)※令和6年6月時点

加算単位数(目安)算定の要件・内容
緊急時訪問看護加算(Ⅰ)/(Ⅱ)600単位/月 / 574単位/月24時間連絡・緊急訪問できる体制+利用者の同意。(Ⅰ)は看護職員の負担軽減の体制整備あり
特別管理加算(Ⅰ)/(Ⅱ)500単位/月 / 250単位/月別表8の状態。(Ⅰ)は重症度の高い状態、(Ⅱ)はその他(対象状態は2-7-8)
ターミナルケア加算2,500単位(死亡月)死亡日・死亡前14日以内に2回以上訪問し、看取りに向けたケアと24時間連絡体制を確保
初回加算(Ⅰ)/(Ⅱ)350単位/月 / 300単位/月新規に計画を作成した利用者への初回訪問。(Ⅰ)は退院当日、(Ⅱ)は退院翌日以降
退院時共同指導加算600単位/回退院時に医療機関と共同で在宅療養上の指導を行い、文書提供
長時間訪問看護加算300単位特別管理を要する等で、1時間30分以上の長時間訪問が必要な場合
複数名訪問看護加算職種・時間により加算処置に複数名が必要・暴力の恐れ 等で2人以上で訪問
夜間・早朝訪問看護加算所定単位の+25%夜間(18~22時)・早朝(6~8時)の訪問
深夜訪問看護加算所定単位の+50%深夜(22~6時)の訪問
専門管理加算250単位/月専門研修修了看護師・特定行為研修修了者による計画的管理
看護体制強化加算(Ⅰ)/(Ⅱ)施設基準による緊急時訪問・特別管理加算の算定割合、ターミナルの実績、看護職員割合等の施設基準を満たし届出
サービス提供体制強化加算(Ⅰ)/(Ⅱ)6単位/回 3単位/回(定期巡回連携時は50/25単位/月)人材の定着・質の評価。ⅠとⅡの違いは勤続年数要件(下記)
口腔連携強化加算50単位/回口腔状態を評価し、歯科医療機関・ケアマネへ情報提供
特別地域訪問看護加算・中山間地域等加算所定単位の割増離島・中山間地域等での訪問

サービス提供体制強化加算(Ⅰ・Ⅱ)の内容

人材の定着・育成に取り組む事業所を評価する加算。(Ⅰ)6単位/回・(Ⅱ)3単位/回(要支援も同額。定期巡回・随時対応型と連携する場合は(Ⅰ)50単位/(Ⅱ)25単位/月)。

区分勤続年数要件(人材要件)
看護師等の総数のうち、勤続7年以上の者が30%以上
看護師等の総数のうち、勤続3年以上の者が30%以上

(Ⅰ)(Ⅱ)共通の要件

  • 全ての看護師等について、個別の研修計画を作成し、計画に沿って研修を実施。
  • 利用者情報・留意事項の伝達、技術指導を目的とした会議をおおむね月1回以上開催し記録(オンライン可)。
  • 全ての看護師等に、事業主負担で年1回以上の健康診断を実施。

勤続年数は前月末時点で換算し、同一法人が経営する他の事業所・病院等での従事期間も通算できる。

2-7-7 介護保険|算定ルール・減算

職種・時間のルール

  • 准看護師:基本単位の90/100で算定。
  • リハ職(PT・OT・ST)1回あたり原則20分として算定。1週間(日曜日〜土曜日)の合計で120分(=20分×6回)までが上限の目安(「週」は暦週で数える)。同日に複数回訪問する場合も2時間ルール(間隔2時間未満の連続2回は「まとめて1回」とみなす)の対象。

主な減算(介護保険)

  • 業務継続計画(BCP)未策定高齢者虐待防止措置未実施:それぞれ所定単位数の1/100減算
  • 要支援のリハ職が利用開始から12か月超5単位減算(下記の8単位減算対象事業所では15単位となり、8単位と合わせて計23単位減算)。

リハ職の訪問に対する「事業所単位」の減算(8単位減算)※令和6年新設

これは訪問1件ごとではなく、事業所(ステーション)の体制・実績で判定する減算。次のいずれかに該当する事業所は、リハ職(PT・OT・ST)の訪問1回につき8単位を減算する(要介護・要支援とも対象)。

判定軸内容
① 訪問回数前年度の、リハ職による訪問回数が看護職員による訪問回数を超えている(リハ職>看護職員)
② 加算の算定緊急時訪問看護加算・特別管理加算・看護体制強化加算のいずれも算定していない(前6か月に実績がない)

①に該当すれば、②の加算の有無にかかわらず8単位減算

  • ①に非該当(看護職員≧リハ職)でも、②に該当(加算をいずれも算定していない)なら8単位減算
  • 訪問回数は「算定回数(20分=1回)」ではなく実際の訪問回数で数え、連続訪問は1回とみなす。一体運営の介護予防分も合算する。
  • 要支援(介護予防)で、この8単位減算を受け、かつリハ職の利用が12か月超の場合は、12か月超の減算が通常の5単位→15単位となり、8単位減算と合わせて計23単位減算となる。

ねらい:本来看護職員が担うべき訪問看護が、リハ職中心の運営に偏っている事業所を是正するための減算。「リハ職の訪問はあくまで看護の一環」という位置づけを徹底する趣旨。

リハ職が1日に3回以上(=合計60分以上)訪問した場合の減算

リハ職の訪問は1回20分。1日に2回を超えて(=3回以上=合計60分以上)訪問した場合、その日の各回を以下の割合で減算する(要介護・要支援で率が異なる)。

区分減算後の算定
要介護(訪問看護費)1日3回以上の日は、各回とも所定単位数の90/100(=▲10%/回)
要支援(介護予防訪問看護費)1日3回以上の日は、各回とも所定単位数の50/100(=▲50%/回。令和6年改定で90/100から強化)

補足:この減算は連続して行った場合に限らず、午前2回・午後1回のように分けて実施しても、1日の合計が3回以上なら対象となる。なお訪問間隔が2時間未満で連続する2回は「まとめて1回」とみなして時間区分で算定する(例:70分+40分=「1時間以上1時間半未満」で算定)。

2-7-8 特別管理加算の対象状態(医療・介護共通/Ⅰ・Ⅱ一覧)

特別管理加算は、対象となる状態の重症度により(Ⅰ)=重症度が高い(Ⅱ)=その他に分かれる(医療・介護で対象の考え方は共通)。金額:医療 (Ⅰ)5,000円/(Ⅱ)2,500円/月、介護 (Ⅰ)500単位/(Ⅱ)250単位/月

特別管理加算(Ⅰ)の対象状態(重症度が高い)

対象状態
在宅悪性腫瘍等患者指導管理(在宅麻薬等注射・在宅腫瘍化学療法注射・在宅強心剤持続投与を含む)を受けている状態
在宅気管切開患者指導管理を受けている状態
気管カニューレを使用している状態
留置カテーテル(膀胱留置カテーテル、腎瘻・膀胱瘻等)を使用している状態

特別管理加算(Ⅱ)の対象状態

対象状態
在宅自己腹膜灌流・在宅血液透析・在宅酸素療法(HOT)・在宅中心静脈栄養法(IVH/ポート含む)・在宅成分栄養経管栄養法(胃ろう・経鼻)・在宅自己導尿・在宅人工呼吸・在宅持続陽圧呼吸療法(CPAP)・在宅自己疼痛管理(PCA)・在宅肺高血圧症患者指導管理 のいずれかを受けている状態
人工肛門または人工膀胱(ストーマ)を設置している状態
真皮を越える褥瘡の状態(DESIGN-R分類で深さd2以上)
点滴注射を週3日以上行う必要があると認められる状態

(Ⅰ)と(Ⅱ)は重複して算定できず、いずれか一方のみ
– 「真皮を越える褥瘡」で算定する場合は、週1回以上、褥瘡の観察・評価を行い記録することが要件。褥瘡が改善して浅くなれば対象外となる。
– 単なる吸引のみでは対象にならない(「気管カニューレ使用」等の状態が必要)。

2-7-9 利用者負担と請求の流れ(医療・介護共通)

  • 利用者負担:総額の1〜3割(所得等による)。残りは保険から給付。
  • 請求:医療保険は各保険者へ、介護保険は国保連を通じて市町村へ。事業所がレセプト(明細書)を作成し、原則翌月10日までに請求する。
  • 記録との連動:算定した基本料金・加算には、必ず根拠となる実施記録・計画・指示が必要。記録がなければ請求は認められず、不正請求とみなされる恐れがある(第3部・記録の重要性を参照)。

2-7-10 交通費の考え方(医療・介護共通)

訪問に伴う交通費(移動費)の扱いは、医療保険と介護保険で考え方が異なる。いずれも「利用者から徴収する場合は、事前に運営規程・重要事項説明書へ明示し、同意を得る」ことが大前提。

区分交通費の考え方
医療保険訪問看護療養費には交通費が含まれていない。そのため、訪問に要した交通費は実費(保険外・自費)として利用者から徴収できる。距離・地域に応じて事業所ごとに料金を設定するのが一般的。
介護保険「通常の事業実施地域」内は交通費を別途徴収できない(サービス費に含まれる)。実施地域を越える場合に限り、交通費(実費相当)を徴収できる。

実務上の注意:医療保険で交通費を徴収する場合も、「訪問に通常要する費用」を超える不当な金額の設定は不可。料金表を作成し、利用者・家族へ契約時に明確に説明して同意(署名)を得ること。自治体・保険者によって取り扱いの解釈が異なることがあるため、必ず事業所の運営規程と保険者の指導内容を確認する。

2-7-11 令和8年(2026年)6月改定の主な変更点(医療保険)

医療保険(診療報酬)は令和8年6月1日施行で改定された(本体改定率+3.09%)。訪問看護に関わる主な変更は次のとおり。

  • 賃上げ(ベースアップ)への対応訪問看護ベースアップ評価料を見直し。(Ⅰ)は780円→1,050円/月へ引き上げ、(Ⅱ)は18区分→36区分(30〜1,080円)に拡大。看護職員等の賃金改善の財源。
  • 物価高騰への対応訪問看護物価対応料を新設(届出不要・全ステーション算定可)。管理療養費の算定者に、月初日60円/2日目以降20円。令和9年6月から倍増(120円/40円)予定。
  • DX・情報連携の推進:既存の訪問看護医療DX情報活用加算(50円/月)に加え、訪問看護医療情報連携加算(1,000円/月)を新設。ICTで他機関の診療情報を活用した計画的管理を評価。
  • オンライン診療の補助訪問看護遠隔診療補助料(2,650円/日)を新設(D to P with N)。
  • 管理療養費の見直し:月初日を全区分で引き上げ、機能強化型4を新設。2日目以降は建物人数・訪問日数で細分化。
  • 記録要件の強化:訪問の開始・終了時刻の記録などが強化。30分以上が標準的な訪問時間として明記され、20分未満は基本療養費を算定できない点、2時間以内の複数回訪問は合算して1回とする点も明確化。

⚠️ 上記は主要点の要約。金額・区分・要件の詳細は年度により変わるため、必ず最新の告示・厚労省通知で確認すること。介護報酬(介護保険)は令和6年改定のままで、次期改定は令和9年度(2027年度)の予定。

2-8 運営基準・人員基準の基礎

  • 人員基準:看護職員(看護師・准看護師)を常勤換算で一定数以上配置。管理者は原則、看護師。
  • 運営基準:運営規程の整備、契約・重要事項説明、記録の整備・保存、秘密保持、苦情対応、非常災害対策などが求められます。
  • リハ職(PT・OT・ST)は看護職員の代わりに配置基準を満たす職員にはならない点に注意(あくまで看護の一環としての提供)。

2-9 自費(保険外)訪問の概要

保険給付の範囲を超えるサービス(回数・時間・内容)は、自費(保険外)で提供される場合があります。料金・契約・説明の透明性が特に重要で、保険と自費の区分を明確にする必要があります。

2-10 制度改定への向き合い方

診療報酬・介護報酬は原則2年・3年ごと(同時改定は6年ごと)に見直されます。新人のうちは細部を暗記するより、「どこを見れば正しい最新情報があるか」を知ることが大切です(第10部リンク集を活用)。