第0部 はじめに

0-1 本資料の目的と使い方

訪問看護は、病院とは大きく異なる「利用者の生活の場」で提供されるケアです。医療者にとっての“ホーム”である病院と違い、訪問先は利用者・家族の“ホーム”であり、私たちは常に「招かれた客」であるという意識が求められます。

本資料は、次の3つを一体で身につけることを目的とします。

  1. 制度を理解する ― どの保険で、どんな根拠で、何を提供するのか
  2. 実務ができる ― 依頼から契約、訪問、記録、緊急対応までの一連の流れ
  3. 人として信頼される ― 接遇・倫理・安全を土台にした関わり

使い方の目安

  • 初日〜1週目:第0〜1部、第4部(接遇)、第5部(安全)を中心に。
  • 同行訪問期間:第3部(ケアプロセス)と第7部(職種別)を実地と照合しながら。
  • 単独訪問移行前:第2部(制度)、第6部(倫理)、第10部(チェックリスト)で総点検。

0-2 対象者

  • 新人看護師:基礎教育・病院経験はあっても在宅は初めての方
  • 中途・復職の看護師:ブランクや異なる領域からの参入
  • リハビリテーション専門職(PT・OT・ST):訪問看護ステーションからのリハ提供に携わる方
  • 管理者・教育担当者が、新人教育の共通土台として用いることも想定しています。

0-3 訪問看護師・リハ職に求められる姿勢(遵守事項)

以下は「心構え」ではなく、守れなければ現場に出せない必須条件である。

  • 生活を看る視点:疾患だけを見て生活・価値観・家族関係を無視するケアは失格。全体を捉えること。
  • 自律と判断、そして限界の自覚:単独訪問では、その場で観察・判断し、的確に報告・連絡できなければならない。同時に、自分の判断の限界を知り、迷ったら必ず確認すること。独断は事故のもと。
  • 報告・連絡・相談の徹底:一人で抱え込むことは許されない。情報を止める行為は重大な過失につながる。
  • 謙虚さと礼節:他人の生活空間に踏み込む仕事である。過信・なれ合い・横柄な態度は即座に信頼を失う。
  • 継続学習の義務:制度も医療も変化し続ける。学びを止めた時点で、安全と質を担保できない。

上記を軽視する姿勢は、能力以前の問題として厳しく指導の対象とする。

0-4 オリエンテーション全体スケジュール例

時期主な内容到達の目安
1日目事業所説明・就業規則・本資料オリエン・物品確認組織と1日の流れを理解する
2~3日目記録システム・様式・緊急時フロー・接遇研修記録と連絡の基本ができる
1週目同行訪問(見学中心)訪問の流れ・マナーを体感する
2~3週目同行訪問(一部実施)観察・処置・記録を指導下で実施
1か月同行訪問(主体的に実施)指導者の確認下で一連を完遂
2~3か月単独訪問へ段階移行単独で安全にケアを提供できる

※期間は事業所・個人の経験により調整します。

0-5 到達目標(単独訪問の可否判定基準)

以下は「努力目標」ではなく、達成できなければ次の段階に進めない合否基準である。未達の項目がある間は、該当業務を単独で行わせない。

  • 1週間後(必達):訪問の1日の流れ、接遇の基本、緊急時の連絡先と手順を、見ずに説明できる。できなければ同行の段階を先に進めない。
  • 1か月後(必達):指導者の確認のもと、アセスメント・計画・ケア・記録の一連を手順を落とさず実施できる
  • 3か月後(必達):単独訪問で安全にケアを提供し、異常の早期発見・的確な報告・多職種連携ができる。

到達が遅れること自体は問題ではない。未達を隠す・できたふりをすることが最大の問題である。正直に申告し、できるまで反復すること。