【指導上の遵守事項】 本部の内容は、破れば法的責任・懲戒処分・刑事罰に直結する絶対的な遵守事項である。守秘義務違反、個人情報の漏えい、虐待の見逃し・不通報は、「うっかり」でも許されない。倫理は個人の裁量ではなく、専門職に課された義務である。
6-1 個人情報保護と守秘義務
看護職には保健師助産師看護師法(守秘義務)が、全職員には個人情報保護法・契約上の秘密保持義務が課される。破れば法的責任・懲戒処分・刑事罰に直結する絶対的な遵守事項である。
- 看護職の守秘義務は法律上の義務であり、退職後も継続する。違反は法的責任を問われる。
- 業務で知り得た情報を、家族・友人・知人・SNSなどに一切漏らさない。「身内だから」「名前は出していないから」「もう担当していないから」もすべて不可。
- エレベーター・電車・飲食店・自宅など、公共の場・私的な場での利用者の話題は厳禁(どこで誰が聞いているか分からない)。
- 情報の共有は「ケアに必要な範囲で、適切な相手に、必要な分だけ」が原則。興味本位の閲覧・詮索もしない。
- 利用者・家族からの情報開示請求等には、自己判断せず事業所ルールに沿って対応する。
- SNSへの投稿は、利用者が特定され得る一切の情報を禁止。写真・地名・施設名・病名・家族構成・エピソードも対象。「鍵アカウント」「一部にしか見せない」も禁止。
- 訪問先で見聞きした家庭内の事情(家族関係・経済状況等)も、すべて守秘の対象である。
6-2 情報端末・記録の取り扱い
- タブレット・スマホ・USB・紙記録などの持ち出し・紛失・置き忘れを防ぐ。車内放置は厳禁(盗難・車上荒らし)。
- パスワード管理、離席時の画面ロックを徹底。端末を家族や第三者に見せない・触らせない。
- 公共Wi‑Fiでの業務データの送受信は避ける。私用端末・私用クラウド・私用メールで業務情報を扱わない。
- 紙記録の誤廃棄・誤送信(FAX・メールの宛先間違い)に注意。送信前に宛先・添付を必ず確認。
- 紛失・漏えい・誤送信が起きた(かもしれない)時は、隠さず直ちに管理者へ報告。初動の遅れが被害を拡大させる。
6-3 看護職の倫理綱領
日本看護協会の看護職の倫理綱領は、看護実践の拠りどころである。人間の尊厳と権利の尊重、平等な看護、信頼関係、意思決定支援、守秘、安全確保、専門性の維持向上などが示されている。リハ職も各職能団体の倫理規程(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の倫理綱領)に準じる。
- 倫理は個人の裁量ではなく、専門職に課された義務である。
- 日々の場面で倫理的ジレンマ(本人の希望と安全が対立する等)に直面したら、一人で判断せずチーム・カンファレンスで検討する。
6-4 意思決定支援・ACP(人生会議)
- ACP(アドバンス・ケア・プランニング/人生会議):本人が望む医療・ケアについて、本人・家族・医療介護者があらかじめ話し合い共有するプロセス。
- 本人の意思を最優先し、状態変化に応じて繰り返し確認・更新する(一度決めたら終わりではない)。
- 本人の意思が確認できない場合は、家族・多職種で本人にとっての最善を推定する。
- 説明は本人が理解・判断できる形(平易な言葉・十分な情報)で行い、選択を急かさない(インフォームド・コンセント/自己決定の尊重)。
6-5 身体拘束・虐待の防止と早期発見
- 身体拘束は原則禁止。在宅でも、ミトン・ベッド柵での囲い込み・向精神薬の過剰使用・「動かないで」と行動を制限する関わりなど、「行動制限」につながる関わりに敏感であること。やむを得ない場合の3要件(切迫性・非代替性・一時性)と手続きを理解する。
- 虐待の種類:身体的・心理的・性的・ネグレクト(介護放棄)・経済的虐待。高齢者・障害者・児童が対象。
- 兆候の例:不自然な外傷・あざ、極端な栄養不良・脱水、怯え・おびえ、不衛生な放置、必要な受診をさせない、年金・預金の不当な使用など。
- 気づいたら抱え込まず、直ちに事業所へ報告。虐待の通報は法律上の義務であり、確証がなくても「疑い」の段階で市町村・地域包括支援センター等へ通報する(通報者は保護される)。
- 家族の介護疲れ・孤立(介護者支援)にも目を向ける。虐待は加害者を責めるだけでなく、背景への支援が必要なことが多い。
6-6 多様性への配慮
- 文化・宗教・国籍・家族形態・性のあり方(LGBTQ+)・価値観など、多様なあり方を尊重する。
- 自分の価値観・「普通」を押し付けない。宗教上の食事・生活習慣、家族の呼び方、性自認などに配慮する。
- 分からないことは決めつけず、本人に丁寧に確認する姿勢を持つ。
- 言語・聴覚・視覚等に配慮したコミュニケーション手段(やさしい日本語、筆談、通訳等)を工夫する。