第10部 交通安全・駐車ルール(車での訪問)

【指導上の遵守事項】 訪問看護は車移動が中心であり、運転中は業務時間そのものである。交通事故・駐車違反は、利用者・近隣・事業所・自分自身のすべてを危険にさらす。「訪問に間に合わせるため」「駐車場所がなかった」は、危険運転・違反の理由には一切ならない。 事故・違反・ヒヤリハットは、物損・当て逃げ・軽微なものも含め必ず事業所へ報告すること。隠すことは重大な違反とみなす。

駐車許可・除外標章の運用は令和7年(2025年)7月から全国的に見直しされている。都道府県・警察署ごとに細部が異なるため、必ず事業所ルールと所轄警察署の最新案内を確認すること。

10-1 訪問看護と車移動の位置づけ

  • 訪問看護は車が主な移動手段であり、1日に何軒も住宅街を移動する。移動時間・運転も業務である。
  • 業務中の事故は、労災・損害賠償・利用者への訪問遅延・事業所の信用失墜に直結する。
  • 焦りが事故を生む。遅れそうな時は運転を急がず、連絡で調整する(第5-4も参照)。無理なスケジュールは管理者へ相談する。
  • 事業所の任意保険・事故時対応フロー・駐車許可証の保管場所を事前に確認しておく。

10-2 訪問看護で特に気をつけるべき交通ルール

住宅街・生活道路を走る訪問看護では、幹線道路とは異なるリスクがある。

場面守るべきルール
生活道路・通学路・キッズゾーン徐行。子ども・高齢者・自転車・車いす・歩行者を最優先し、飛び出しを予測する
一時停止完全停止(タイヤを止め、左右を目視)。「止まったつもり」の徐行進入は違反かつ事故のもと
狭い道路・後退すれ違い・バック時の接触・人身事故が多い。降車前後の周囲確認を徹底
ながら運転厳禁(走行中のスマホ・ナビ操作・通話)。ナビ設定・連絡は停車してから。法改正で厳罰化
シートベルト全席着用
飲酒運転絶対禁止。前夜の飲酒によるアルコールの残り(翌朝の運転)にも注意。出退勤時のアルコール検査は10-3参照
悪天候・夕暮れ速度を落とし、早めのライト点灯。凍結・積雪時は特に慎重に
自転車訪問ヘルメット着用は努力義務。傘差し・ながら運転禁止。酒気帯び運転の罰則にも注意

事故発生時の順序(必ずこの順)

  1. 負傷者の救護・安全確保(二次事故防止)
  2. 警察へ通報(110番) ※物損・自損・当て逃げでも通報義務あり
  3. 事業所へ報告(管理者・オンコール)
  4. 必要に応じ保険会社・利用者へ連絡
  5. 時系列で記録

10-3 出退勤時のアルコール検査(酒気帯び確認)【必須】

訪問看護は車移動が中心であり、飲酒運転は利用者・職員・地域の命を奪う重大事故に直結する。事業所が安全運転管理者選任事業所に該当する場合、道路交通法施行規則に基づき、アルコール検知器を用いた酒気帯び確認が義務となっている(白ナンバーでも対象となり得る。令和4年4月〜酒気帯び確認、令和5年12月〜検知器使用が義務化)。

(1)なぜ出退勤時に検査するのか

  • 前夜の飲酒の残り(翌朝の酒気帯び)は自覚しにくいが、検知器なら客観的に分かる。
  • 訪問看護は単独で住宅街を運転するため、事故が起きれば重大になりやすい。
  • 確認は「個々の訪問の直前直後」ではなく、一連の業務としての運転の開始前(出勤時)と終了後(退勤時)で足りるとされている(警察庁通達)。つまり出退勤時の検査が実務上の基本
  • 検査を省略・虚偽報告することは、事業所の法令違反であり、事故時には本人・事業所双方の責任が重くなる。

(2)義務の対象になる事業所(目安)

次のいずれかに該当する自動車の使用の本拠(事業所)では、安全運転管理者の選任と酒気帯び確認が必要となる。

  • 乗車定員11人以上の自動車を1台以上使用
  • その他の自動車を5台以上使用(原付を除く自動二輪は0.5台換算)

訪問看護の社用車・業務使用のマイカー(いわゆる持ち込み車両)も、業務に使用していれば台数にカウントされ得る。自事業所が対象かどうかは必ず管理者に確認すること。対象外でも、飲酒運転防止のため検査を実施している事業所は多い。

(3)検査で行うこと(運転者側の遵守事項)

タイミング内容
出勤時(運転開始前)目視等(顔色・呼気・声の調子)+アルコール検知器で酒気帯びの有無を確認。異常があれば運転しない
退勤時(運転終了後)同様に検知器で確認し、結果を報告・記録する
直行直帰など対面困難時携帯型検知器+電話/カメラ等で、安全運転管理者(または補助者)へ結果を報告する(事業所ルールに従う)

検知器が反応したら、その日は絶対に運転しない。管理者へ報告し、代替手段(他職員への交代・公共交通・訪問調整)をとる。

  • 他人の息を吹きかける・水で希釈する等の不正は厳禁(発覚時は懲戒の対象となり得る)。
  • 確認結果は事業所が記録し、原則1年間保存する。運転者は記録への協力義務がある。
  • 点呼では、アルコールに加え、過労・病気・睡眠不足など正常運転ができないおそれの有無も確認される。不調があれば申告する。

(4)新人への徹底事項

  • 「少ししか飲んでいない」「もう大丈夫」は通用しない。運転前夜の飲酒は、翌朝の検査で問題が出ない水準まで控える(翌日運転がある日は飲まない、が最も安全)。
  • オンコール明け・睡眠不足の日も、検査とあわせて運転可否を管理者と相談する。
  • 事業所の検査手順・記録方法・直行直帰時のルールを初日から把握し、省略しない。

参考:警察庁「安全運転管理者による運転者に対する点呼等の実施及び酒気帯び確認等について(通達)」
URL:https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/anzenuntenkanrisya/pdf/20241227ankankatyoutuutatu.pdf

10-4 駐車の基本(許可証の有無に関わらず守る)

  • 民家の出入口・車庫の前を塞がない。私有地・他店舗の駐車場に無断駐車しない。
  • 通行の妨げにならない位置に停め、歩行者・車いす・ベビーカーの通行を妨げない
  • ハザードランプを点けても、エンジンを止めて離れれば「駐車」に該当する。「少しの間だから」は通用しない。
  • 停車=5分以内の貨物の積卸し等で運転者がすぐ動かせる状態/駐車=それ以外(訪問で離れる行為は原則「駐車」)。
  • 近隣からの苦情・通報は事業所の信用に関わる。トラブル時は自己判断せず事業所へ。

10-5 2つの制度を混同しない(駐車許可/駐車禁止除外標章)

訪問看護の駐車には、よく似た2つの制度がある。用途が違うので混同しないこと。

比較駐車許可(警察署長の許可)駐車禁止除外標章(公安委員会の標章)
根拠道路交通法45第1項ただし書道路交通法4第2項+都道府県規則
主な用途日常の訪問看護で、訪問先付近に駐車場所がなく、駐車禁止場所へやむを得ず停める場合医師の指示(包括的指示を含む)を受け、直ちに緊急訪問して看護を行うために使用中の場合
場所の特定許可された場所・日時・条件の範囲内でのみ可標識による駐車禁止規制のある場所で、緊急訪問の用務中に限り可(都道府県規則による)
申請所轄警察署(複数署は一括申請可)都道府県警察本部/警察署(要疎明)
注意「いつもの訪問」向けの本命制度緊急時に限る。通常訪問での常用は不可

新人への要点:普段の訪問で使うのは主に「駐車許可証」。除外標章は緊急訪問専用であり、「標章があるからどこでも停めてよい」ではない。

10-6 駐車許可証の申請・掲示・使い方【完全解説】

(1)許可の要件(令和7年7月運用見直し後の全国共通の考え方)

警察庁の運用では、おおむね次を満たす必要がある。

  • 日時:交通に危険・著しい阻害を生じる時間帯でない/用務に必要な時間を超えない(登下校時間帯などは不許可になりやすい)。
  • 場所:道交法第45条の駐車禁止規制のみがかかっている場所であること。無余地駐車・法定駐停車禁止場所は対象外。
  • 用務:公共交通等では目的達成が著しく困難/5分以内の停車では足りない用務であること。
  • 他の駐車場所の有無:用務先からおおむね100メートル以内に、路外駐車場・路上駐車場・駐車禁止でない道路部分がなく(または利用困難)であること。

(2)申請の方法

  • 申請先:駐車場所を管轄する警察署(交通課)。複数署にまたがる場合は、いずれか1署で一括申請可(申請は交付を受ける警察署長宛て)。一括申請は駐車日の1週間前までが目安。
  • 必要書類(各2部)
書類内容
① 駐車許可申請書所定様式(各都道府県警サイトからダウンロード)
② 駐車場所及び周辺の見取図訪問先の位置が分かるもの。複数箇所を1枚にまとめて可
③ 自動車検査証(車検証)の写し記録事項が記載された書面でも可
④ 用務を疎明する書面契約書・訪問計画書・資格証等の写し(用務が分かる既存書面で可)

個人情報保護医師の指示書や病名が記載された書面は提出しないこと。

  • 日時の書き方:訪問看護では「事業所の業務時間内」および「緊急訪問時」として許可を受けられる場合がある。
  • 場所の書き方:「〇〇町△番地付近路上」のように、訪問先付近で柔軟に選択できる許可が可能な場合がある。
  • 有効期間:反復継続する用務では、原則1年以上
  • 訪問先の追加:許可期間内なら、追加する訪問先の見取図等のみを提出すれば足りる(全体の再申請は不要)。
  • 紛失時:再交付申請(身分確認あり)。不要になった許可証は廃棄

(3)駐車中の掲示・使用ルール(これで違反になる/ならないが決まる)

  1. 許可を受けた日時・場所・条件の範囲内でのみ駐車する。
  2. 駐車中は許可証を車内の見やすい箇所に掲出する(別紙がある場合は別紙も掲出)。
  3. 許可された車両で使用する(他人・別車両への貸し借りは不可)。
  4. 許可された用務(訪問看護)のために使用する。用事の合間の買い物・食事・私用・休憩での使用は目的外使用=不正使用
  5. 必要以上に長く停めない(用務に必要な時間を超えない)。
  6. 訪問先を変更・追加したら、事業所経由で警察へ追加申請する(勝手に未許可の場所へ停めるのは違反)。

不正使用への対処:積極的な検挙、許可取消車両の使用制限命令など、警察は厳正に対処する方針を明示している。事業所全体の信用・業務継続に関わる。

10-7 駐車禁止除外標章(緊急訪問用)

  • 対象となり得る車両:保健師・看護師・准看護師が、医師の指示(包括的指示を含む)を受け、直ちに患者宅等を緊急訪問して看護を行うために使用中の車両、または助産師が緊急訪問するために使用中の車両(令和7年7月以降、全国で明確化)。
  • 疎明の例:24時間対応体制加算・緊急時訪問看護加算の届出受理を示す公的書類、免許証の写し 等(都道府県により異なる)。
  • 使えるのは緊急訪問の用務中のみ。通常の定期訪問での常用は不可。
  • 標章を掲出していても、法定の駐停車禁止場所・無余地駐車には停められない(次項と同じ)。

10-8 許可証・標章があっても駐車できない場所【最重要】

駐車許可/除外標章は「標識による駐車禁止(§45)」を緩和するだけであり、法律で駐停車が禁止されている場所(§44等)や無余地駐車には効かない。ここを誤解すると、許可証を持っていても違反になる。

許可証・標章があっても駐停車できない主な場所

  • 交差点・その端から5m以内曲がり角から5m以内
  • 横断歩道・自転車横断帯とその前後5m以内
  • 踏切とその前後10m以内トンネル内軌道敷内
  • バス停の標示板から10m以内(運行時間中)
  • 安全地帯の左側とその前後10m以内
  • 坂道の頂上付近・勾配の急な坂
  • 消火栓・防火水槽等の付近、火災報知機から1m以内
  • 駐車場・車庫等の出入口から3m以内
  • 無余地場所(車の右側に3.5m以上の余地がない場所)
  • 通学路・キッズゾーン・バス路線など、交通阻害・危険が生じる場所(許可審査でも不許可になりやすい)

許可証が効くのは「駐車禁止の標識・黄色い実線がある区間」に限られる。上記は許可の有無に関係なく駐車違反となる。

公式資料(必読):警察庁「駐車許可証等を掲出しても駐車することができない場所等」(道交法第44条・第45条・第47条・第49条の3、保管場所法第11条関係)
URL:https://www.npa.go.jp/laws/notification/koutuu/kisei/kisei20251017-4.pdf

10-9 駐車違反の罰金(反則金)・点数・放置違反金【普通車・完全版】

駐車違反は、運転者がすぐ動かせるかで次のように分かれる。

  • 駐停車違反(現認):警察官が現認し、運転者がその場にいる(すぐ動かせる)場合。
  • 放置駐車違反:運転者が車から離れ、直ちに運転できない状態(訪問中に離席するのはこれ)。

(1)普通車の反則金・違反点数

違反の種類場所反則金(普通車)違反点数
放置駐車違反駐停車禁止場所等18,0003
放置駐車違反駐車禁止場所等15,0002
駐停車違反(現認)駐停車禁止場所等12,0002
駐停車違反(現認)駐車禁止場所等10,0001

大型・中型・準中型等はさらに高額(例:放置・駐停車禁止場所等で25,000円)。

  • 二輪・原付は低め(例:放置・駐車禁止場所等で9,000円)。
  • 高齢運転者等専用駐車区間での違反は、上記に2,000円加算される場合がある。
  • レッカー移動された場合は、上記に加えレッカー費用・保管料が別途かかる。
  • 金額・点数は改正で変わり得るため、最新は警察庁・都道府県警で確認すること。

(2)放置違反金制度(事業所にも及ぶ)

  1. 放置駐車違反で確認標章(黄色いステッカー)が貼られる。
  2. 運転者が警察署へ出頭し、反則金を納付するのが原則(点数も付く)。
  3. 運転者が納付・出頭しない/運転者が判明しない場合、車の使用者(多くは事業所)に同額の「放置違反金」の納付命令が出る。
  4. 放置違反金を滞納すると車検が受けられない、繰り返すと車両の使用制限命令が出るなど、事業所全体の問題になる。

業務中の違反でも、一義的な責任は運転した本人違反したら速やかに事業所へ報告し、事業所ルールに従って対応する。隠すと処分が重くなる。

(3)やってはいけないこと(NG=違反・不正使用)

  • 許可証・標章を掲出せずに駐車禁止場所へ停める
  • 許可されていない訪問先・日時・車両で使用する
  • 許可証を掲出していても、交差点付近・横断歩道前・車庫前・無余地などに停める
  • 用事の合間の買い物・食事・休憩など目的外使用
  • 確認標章が貼られたのに無視・はがして放置する
  • 違反を事業所に報告しない

10-10 訪問時の駐車 実務手順(推奨)

  1. 事前確認:利用者宅の駐車スペース、近隣のコインパーキング、駐車許可を受けた場所を把握する。
  2. 許可証は掲示し、許可された日時・場所・条件を守る(別紙があれば別紙も)。
  3. 迷ったら停めない:適切な駐車場所がなければ、無理に駐車せず、コインパーキング利用や、遅れる旨の連絡で対応する。「違反して駐車」より「連絡して調整」を選ぶ。
  4. 近隣配慮:出入口・通行を妨げない。苦情・トラブルは自己判断せず事業所へ報告。
  5. 事故・違反時:警察通報 → 事業所報告 → 記録。物損でも省略しない。

参考:警察庁「駐車許可の概要、申請手続等」https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/seibi2/shinsei-todokede/tyuusha-hp.html / 日本看護協会「訪問看護等に使用する車両等に係る駐車許可及び駐車規制からの除外措置について」